after the winter

暇人が物語を書いていきます。よろしくお願いします。

【朱い僕らの母星】御神体シリーズ小話

『神父様の眼鏡』

 

『この眼鏡をかければなんでも見えるのです。そして、この教典には、人が平和になるための教えがあります。いつか、あなたたちにも祝福を』

 

少年は、遺体となった神父様の眼鏡を手に取った、そのレンズは、ただのプラスチックだった。
教典の本を開いた。見たこともない絵のような文字が並んでいた。やってきた大人たちが言うには
「これは子供のいたずらだ」
とのことだった。

 

神父様の目は見えていなかったのだ。

それでも、神父様は神を信じ、平和を説き、ぼくたちが生きるためと戦っていたのだ。

 

少年は、眼鏡をかけて、経典を開く。神父様のことを思う。そして平和を思う。

いつまでもここは変わらない。それでもみんなは口にする。
『いつかあなたに祝福を』